楼門五三桐 (さんもんごさんのきり) 名セリフ : 絶景かな絶景かな

楼門五三桐

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目次

役名

  • 石川五右衛門 (いしかわ ごえもん)
  • 真柴久吉 (ましば ひさよし)
  • 深井与九郎 (ふかい よくろう)
  • 所化
  • 捕人

南禅寺山門(なんぜんじさんもん)の場

深井

こりゃ、其方たちは当院内の所化どもか。

所化

甲 : さようにござります。しなわちツン典、
乙 : 珍頓と申しまする、
二人 : 所化どもにござりまする。

深井

いや、三味線のような名ではあるわえ…おふれの趣き申し聞かさん、承れ。このほど、石川五右衛門という盗賊、五畿七道(ごきしちどう)を徘徊なし、貴人高家(こうけ)へ忍び入り、衣類器物に目をかけず、ただ金銀のみ奪い取るは、まさしく只の盗人ならず、さっするところ、先達て亡びたる、宋蘇卿(そうそけい)の余類か、又は先年滅亡せし武智、柴田が残党にて、叛逆(むほん)の企てあって、軍用金を集めんためか。何にせよ、油断ならざるこの時節、もし当院内へ込み入らば、早鐘(はやがね)をもって合図せよ、さっそく身共は… 参らぬが、この者どもを遣わすであろう。

一 : ああもしもし、お頭様。その五右衛門は、名におう曲者、
二 : なかなかもって、われわれの手際では、召し捕れませんね。

深井

たわけ者め、たかのしれたる盗賊の帳本、何ほどのことあるべきか。

捕一 : さようなら、あなたさま只一人でからめ捕り、
捕二 : 高名手柄をなされませ。

深井

そりゃ、いうまでもない、安い事だが残念ながら、身共、ふぐ汁と盗賊は一生断物だわえ。

所化

二人 : 何をおっしゃります。

深井

いや、まだまだ申し聞かす事がある。その五右衛門をからめとれば、莫大なる御ほうびを下さるぞ。

二人 : それはありがとうござります。

深井

これこれ、ただ貰っては相ならぬ。この洛中洛外は、かくいう深井与九郎がかかり、かように日夜触歩かば、たとえ何者が召し捕ろうと、褒美の金は山分けだぞ。

二人 : へいへい、よろしゅうござります。

深井

よいか、よいな。よければきっと申し渡したぞ。家来、参れ。

大薩摩

それ緑林白浪の、堅き言の葉和らげて、昼を夜なる歓楽は、盧生が夢のそれならで、瑞竜山の楼門に暫し栄花の夢見草、花の白浪青柳の、翠の林色まして、春の詠めや勝るらん。

石川五右衛門

絶景かな絶景かな。春の詠(なが)めは価千金とは小さなたとえ、この五右衛門が目からは万両。もはや日も西に傾き、誠に春の夕暮の桜は、とりわけ一入(ひとしお)一入。はて、麗らかなながめじゃなあ。

はて、心得ぬ。あの鷹が、我を恐れず羽を休むるは、やや、血汐をもって認(したた)めし、この片袖は。はて心得ぬ。

大明(たいみん)十二代神宗(しんそう)皇帝の臣下、左将軍宋蘇卿(そうそけい)、死後に残す遺言の事、

往昔(おうせき)、神宗皇帝、この日本の幕下(ばっか)につけんと、使節をもって願いしを、久吉、使節を捕虜(とりこ)となし、再び本国へ帰さざりしゆえ、皇帝の無念散ぜんため、我は子を乳人(めのと)に預け、密かにこの土へ渡海なし、箱崎に地に世を忍ぶうち、計らずも、和国の女にかたらい、男女二人を儲(もう)く、唐と和朝に三人の我が嫡子を世に立てんと、江北(こうほく)一株(ちゅう)の枳(からたち)、江南二株の橘、すべて金錠(きんじょう)を掛け、扶桑にはびこると、玄海が嶋に石碑を建てしを、さとくも叛逆むほんとさっし、真柴久吉がために相果て終わんぬ。その砌(みぎり)、二人の男子(なんし)は、母もろともに死を退れ、もし天運つきず世を忍び、兄弟この土に存命なさば、わがかたみに残し置きし、蘭奢待(らんじゃたい)と名づけし名香(めいこう)を証拠に名乗り合い、父の怨敵、真柴久吉を討ちとり、修羅の妄執(もうしゅう)はらさせくれ候えかし。

むむ、この遺書に記したる蘭奢待の名木所持せしわれは、宋蘇卿が忘れ記念(がたみ)であったるか。我、幼き時頼より父母に別れ、いとけなきに孤児となりしを、武智光秀殿の養育に預かり、成長なして名も惟任(これとう)佐馬五郎と呼ぶ。しかるに、光秀どの、春永を討ち取り、四海を掌握するといえど、はつか三日にして、久吉がために亡ぼされ、終(つい)に無念の死をとげ給う。高恩請けしわれなれば、光秀殿の弔い軍(いくさ)、真柴久吉討ちとらんと、殉死を止まり世を忍び、今石川五右衛門と名乗る今の今まで、我が父はいずくの誰と白浪の、強悪(ごうあく)非道の身ながらも、明暮(あけくれ)心に掛かりし素性も、この遺書にて、わが父は宋蘇卿としれたる上は、養父といい実父といい、久吉がために無念の最期、鷹のしらせは親子の導引(みちびき)、思えば蘭奢の名香(めいこう)も、死後のかたみとなったるか、

遺恨重なる真柴久吉、たとえこの身は油で煮られ、肉はとろけ、骨はししびしおになるとても、父の怨敵、今にぞ思いしらしてくれん。

真柴久吉

石川や浜の真砂は尽きるとも、

石川五右衛門

真柴久吉

世に盗人の種は尽きまじ。

石川五右衛門

なんと、

真柴久吉

順礼に、

御ほうしゃ。

参考文献

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